養育費について 養育費に関する手続き
Auther :木上 望
Q 調停の話し合いで、子どもは私が育てることになり、養育費についても合意しました。ところが、元夫は、約束の期日に支払いをせず、連絡をしても、忙しいからと話になりません。どうしたらいいでしょうか?
A 養育費については、通常、支払期間が相当長期に及ぶため、調停で合意に至っていても、ご相談のケースのように途中で支払が滞ってしまうということも生じがちです。こうした場合の対応としては、まずは、相手方に対して、督促するということが一般的ですが、ご相談のケースのように連絡をしても状況が改善しない場合や、離婚に至る経緯等から、連絡をすること自体が困難という場合もあると思います。
こうした場合の養育費の履行確保の手続きとしては、家庭裁判所から相手方に履行を促してもらう方法(履行勧告・履行命令)と、強制執行(直接強制・間接強制)を行うという方法があります。
(1)履行勧告・履行命令
履行勧告とは、家庭裁判所が、権利者の申出に基づき、調停審判で定められた義務の履行状況を調査し、支払義務者に対し、その義務の履行を勧告する制度です(家事事件手続法第289条、人事訴訟法第38条)。
また、履行命令とは支払義務者が財産上の義務の履行に応じない場合に、家庭裁判所が、権利者の申立てにより、支払義務者に対して、相当の期間内にその義務を履行するよう命令する制度です(家事事件手続法第290条、人事訴訟法第39条。履行命令に正当な理由なく従わない場合、10万円以下の過料に処せられます。
なお、平成27年の司法統計年報によると、同年の履行勧告の申立件数(金銭債務の不履行を理由とするもの)は、全国で合計1万4413件、履行命令の申立件数は85件となっています。履行命令については、その制裁が過料にとどまり、強制執行に比べると実効性に乏しいこともあって、ほとんど活用されていません。
(2)強制執行
相手方の資産や就業先が判明している場合には、地方裁判所に対して、強制執行を申し立て、給与や預金の差押えることになります。養育費や婚姻費用等については、その一部に不履行があれば、支払期限が到来していない将来の分についても、あらかじめ強制執行をすることができ、相手が将来支給を受けることができる給料等の債権を差押えることができます(民事執行法第151条の 2第1項)。また、差押えができる金額についても、通常の金銭債権の不履行を理由として給与等を差し押さえる場合、原則は、相手方の給与等の4分の1が上限となりますが、養育費や婚姻費用等については、例外的に、相手方の給料等の2分の 1まで差押ができるなど、手厚く保護されています (民事執行法第152条第3項)。
また、養育費や婚姻費用など夫婦・親子その他の親族関係から生ずる扶養に関する権利については、直接的な強制執行の他に、間接強制という方法による強制執行も行うことができます(民事執行法167条の15)。間接強制とは、一定の期間内に債務を履行するように命じ、それまでに履行をしないときは、その債務とは別に間接強制金を課すことを警告することで、支払義務者を間接的に圧迫し、自発的な債務の支払を促すという方法です(民事執行法第172条第1項)。こうした間接強制は、例えば、給与を差し押さえると相手方が職場に居辛くなり、退職により共倒れとなってしまうことが懸念されるような場合に、これを回避しつつ、履行を強制する方法として活用が見込まれるといわれています。
ご相談のケースでも、相手方の状況を勘案し、これらの中から適切な方法を選択し、養育費の確実な履行を確保していくことになります。
お困りの際は弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください。